茶箱とは...こんな箱です。中に亜鉛メッキのトタンを貼ることにより、防虫性、防湿性に優れ、お茶のほかにお米、海苔、せんべいなど湿気に弱い食品を入れるのに適しています。
江戸時代のころ江戸や大阪へ、また外国への輸出用のお茶を運ぶために作られたのが最初と言われ、亜鉛メッキのトタンなど存在しないため、小柿を潰して作った紙を貼っていたそうです。
こちらは、ラス紙と言って昭和30年頃まで、トタンの代わりに茶箱の中で使用していた紙で、防水効果が高いものです。
■運搬方法について
江戸時代:大井川を使うことが禁止されていたため、人力で海まで運搬
明治時代:大井川で船を使った運搬が開始
大正時代:山から大井川まで川根索道による運搬開始、大井川から船を使って運搬。
昭和初期:大井川鐵道による運搬が開始
昭和40年以降:クルマによる運搬が開始
今回伺ったのは、こちらの前田製函所さん。昭和28年から、手作りの茶箱を63年間作り続けている作業所です。
材は川根本町のスギです。スギは水分が多い時は吸収し、少ない時は出すという特性により湿気や乾燥に強い材というとこから茶箱に使用されてきました。
スギは乾燥すると縮んでしまいます。そのまま茶箱にしてしまうと、外の木材と中のトタンの大きさが合わなくなり、箱が変形してしまうため、2ヶ月以上かけて十分に乾燥させます。乾燥には水分も必要で、雨水に晒すことで中の水分を流します。そのため雨の日も構わず干しておくそうです。
乾燥させると、今度は材が反ってしまうため、2~3日間、重しを乗せてまっすぐにしています。
こちらは材を各パーツの大きさに切っていく機械。茶箱はオーダーメイドまで含めると30以上ものサイズがあるため、さまざまな大きさに切り、面を削ったり、厚さを調整していきます。
天板や底板を製作する際、1つの材では足りないため、2つの材をつなぎ合わせていくところです。
つなぎ合わせるには、このような波型状のクギを使ってつなぎます。
本体、フタの組み立てをしています。
フタの大きさが製作時と変わってしまうと、閉まらなくなるなどの問題が発生するため、フタには質の良い材を選択しています。この見極めには長い経験が必要。
本体部分の組み立て後、トタンをハンダ付けで貼っています。
そして最後にクギを打った箇所や、節の部分にボンドに糠を加えたものを埋めて、和紙で目張りを行います。この作業も非常に綺麗で早いです。
出来上がったのが、こちらの茶箱。1kg、5㎏、10㎏、15kg、20㎏、30㎏、40㎏、60㎏、オーダーメードなど、全部で30以上のパターンを作成しています。これで完成になりますが、ここからさまざまな装飾を施したものが人気です。
古い洋服や着物の生地を使用したインテリア茶箱。近年、海外からも注目を受けています。嫁入り道具にピッタリですね~
茶箱からインテリア茶箱へ製作(茶箱への布張り、キャスターやヒンジ類の取り付け、内張り、内箱、内袋、オーバルミラー、残布の有効利用法など)を教えていただける教室があり、全国にインストラクターが60人いますので、お近くの教室で受講することができます。
簡単に製作工程をお伝えしましたが、どの木材も微妙に異なる質であることにより、同じサイズでもどれ一つとして、同じ大きさにはなりません。そのわずかな感覚が職人の技術と言え、全て昔ながらの手作りで続けている理由です。木の反りや隙間を作らないなど精度が高いものがインテリア茶箱に使用される茶箱であり、そのため月あたりの生産は6人で500個程度と大量生産ができません。
しかし、以下の理由により、茶箱の需要は確実に減少しています。
・お茶の需要が減少
・包装技術の進歩
・海外への引っ越しやその他物資の梱包用にかなりの需要があったが、木製梱包材が病害虫を伝播することによる、アメリカへの輸出規制
昭和50年ころには、静岡県で40軒以上の製作所があったそうですが、今では全国でも7軒(全て静岡県)しかなく、作業されている方の高齢化もあり存続が危ぶまれています。
茶箱はこのまま無くなってしまうのでしょうか...
お茶やお米などの食料品を入れる他に、防災グッツ、衣類、重要書類、CDケース、アクセサリー、カメラなど使用用途はさまざまで、火事が起きた時、この茶箱に入っていた中身だけが無事だったという逸話もあります。
インテリア茶箱などの新しい使い方によって茶箱の需要はまだ十分にあり、世界中に広まる可能性を秘めているものです。なんとか次世代に継承していくような仕組みが何かないかと思ったところです。
<参考文献>
茶箱に詰まった歴史 ~茶業と林業を結んだ産業~
市川翔太 静岡大学人文学部 2009年フィールドワーク実習報告書
https://ir.lib.shizuoka.ac.jp/bitstream/10297/4084/1/091224003.pdf
↓↓↓良かったらクリックお願いします!!!
この記事へのコメント