2日とも著名な方々ばかり、大変貴重なお話をいただきましたので、
その内容をブログでご紹介しようと思います。
■お題目
2月24日① 望月 将悟さん 「南アルプスと井川への想いを語る」
2月24日② 内海 登さん 「南アルプスの自然と歴史」
3月17日① 内山 節さん「森の未来 社会の未来」
3月17日② 田中 正則さん 「日本林業の可能性を探る」
これといった写真がなく、文章だけでは飽きますので、
ワタシが撮影した木々の写真をいくつか挟んでいこうと思います。
2月24日① 望月 将悟さん 「南アルプスと井川への想いを語る」
望月将悟さんは、静岡市消防局の山岳救助隊に所属し、
富山湾~駿河湾まで日本アルプスを縦断する「トランスジャパンアルプスレース」
4連覇中という静岡市井川出身の超人です。
「トランスジャパンアルプスレース」は、
415kmを公共交通機関の使用や山小屋宿泊をなしで7日以内で走破するレースです。
・フルマラソン3時間20分以内
・コースタイム20時間以上の山岳トレイルコースを55%以下のタイムで走りきれる体力・持久力
など他にも厳しい参加条件をクリアした猛者の方々ばかりです。
そんな中でも4連覇している望月将悟さんは本当にスゴイ方ですね。
この「トランスジャパンアルプスレース」についての逸話や
井川での生活についての講演をいただきました。
印象に残っているお話として、
■子どもの頃、家業の農家の手伝いで重い竹カゴを担いで運ぶのを一日何往復もしていた。
→やはり子どもの頃の環境や体験が重要です。
■東京マラソン2015で40ポンド(18.1kg)の重りを背負って3時間06分16秒で完走(ギネス記録)
→重りなしで走ってもタイムは20分ほどしか変わらなく、
次回は60ポンドの重りの記録を狙っているそうです。
■5日で8時間程度しか寝ないので、幻覚や幻聴も。
→レース中、周囲の樹木がお化けに見えたり、
レース終了後1週間くらい、チャイム音が頭の中に鳴り響くなど。
でも昨年のレースでは、このようなことが全く無く走ることができたそうです。
■疲労が極限になってくると、取材カメラマンへの対応が困難に。
それでも沿道からのみなさんの応援が背中を押してくれ、涙が零れそうだった。
→「足を止めないで」という応援の声が嬉しかった。
地元がゴールというのが、やはり大きいですね。
ワタシも山を歩くことが好きですが、好きであると公言すべきかためらうほど、
ぐうたら人間ですので、望月さんのお話しは刺激というより恐縮しておりました。
先日も山好きの方と登山に行ったのですが、自分の体力の無さに情けなく帰ってきました。
山登りは自分が楽しいと思うペース、
ワタシの場合、花や木を眺めながら、場合によっては、
図鑑を手に持ってその場で調べながら歩くのが楽しいな~と思うので、
一人で登ることが多くなっています。
まあ、誰かと山に行ってもご迷惑のかからない程度に日頃から体力をつけておきたいと思います。
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ヒメシャラ(大札山) ツバキ科の落葉広葉樹
本州の関東~九州までの太平洋側の山地に生育。日本固有種。
赤褐色の樹皮に触ると夏でも冷たくて、木に抱きついて、登山途中の火照った体を冷ますのにちょうどよいです。削り馬のスプーン作りでも人気のある木です。
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2月24日② 内海 登さん 「南アルプスの自然と歴史」
元東海フォレスト社長の内海さんから、井川山林の歴史、概要について、講演いただきました。
井川山林とは…
江戸時代、幕府の直轄地であったこの土地。
2.4万ヘクタールの土地、標高960mから3189m(間ノ岳)までの急峻な地形。
明治28年に大倉喜八郎が購入して、椹島や二軒小屋を拠点として木材生産や水力発電を行うようになりました。
今でも地上波TV、インターネットはつながらなく、人間が立ち入るのも大変な土地に、明治~昭和初期に行われた事業は想像を絶する困難であったと思います。
■植生環境について
標高2600mを越えると、ハイマツを中心とした高山帯
1800~2200mでは、シラビソやトウヒといった亜寒帯針葉樹林
シラビソは、写真のようにある範囲がまとまって枯れてしまう縞枯れ現象を見ることができます。
枯れてしまったところには、新しい幼木が育ち、自動的に世代交代していきますが、
縞枯れ現象のはっきりした原因は解明されていないそうです。
1000~1800mは、モミ、ツガなどの針葉樹、ブナやナラなどの広葉樹。天然二次林のエリアが多い。
※天然二次林とは、伐採を行ったあと、そのまま自然に生えてきた樹林帯。
1000m以下、スギやヒノキの人工林。人工林は2.4haの中で1000haと非常に少ない。
といった環境のもと、特種東海製紙グループは、環境に配慮した森の管理に重点を置いた林業、観光事業、発電事業を行っています。
~~~ここから、ワタシの思っていること~~~
環境に配慮した事業は重要であると言われているものの、こういった施策に対応した世間の風潮、労働体系になっていないと思います。
日本はこれまで経済優先でやってきました。しかし、自動車や電化製品は、アジア圏の国々の技術が進歩するに連れて、国内でどんなに頑張っても売れなくなってしまったように、経済優先の世の中は限界があるような気がします。
物が溢れ、インターネットでつながり、何でも手に入る便利な世の中は、もう十分にできたのではないでしょうか。
自然環境は地球がなくならない限り無限です。これまでの技術を生かしながら、環境優先の国に転換していくことが、国内でも世界的にも大きな効果をもたらすのではと思っています。
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ブナ(智者山) ブナ科の落葉広葉樹
北海道南部~九州までの山地に生育。日本固有種。
ブナを漢字で書くと、橅(木ヘンに無)と書きます。腐りやすい上に加工後に曲がって狂いやすいため、要のない木として戦後にたくさん伐採され、スギやヒノキの変わりました。
しかし、大量の落ち葉による水涵養機能、ドングリは動物の餌にといった生態系には欠かせない木です。
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3月17日① 内山 節さん「森の未来 社会の未来」
内山さんは1970年から東京と群馬県上野村を往復して生活している哲学者。
伝統回帰の理想のもと行われているさまざまな事業について、講演いただきました。
上野村は町面積の96%が森林、人口1,300人程度の小さな村。
伝統回帰とは、現代で必要なものだけを取り入れながらも、昔に戻る暮らし。半市場経済
具体的には、
■木質ペレット生産による暖房
→ 家庭へのペレットストーブ導入に90%の補助金。
燃料となるペレットは灯油と熱量当たり同額とする。
■木質ペレットによる発電と小水力発電により町内の電力100%供給を目指す
→ 木質ペレットは町外へ販売しない。全て地産地消
■森林を観光資源化することで年間20万人の観光客
→ 森の体験館、自然体験学習の家、森林科学館
(森林セラピー基地、環境学習、木工クラフトなど)
■現在、木工職人30人、林業25人、キノコの生産65人が従事し労働確保
→ 産業開発するのではなく採算が合うような労働体系を考えることが重要
■移住者、町外の方の意見も積極的に取り入れる
→ 現在、住民の18%が移住者。ペレット発電機は町外の方の意見から
このお話を聞いて、ワタシが思っている多くのことを実践している町だと感じました。
ワタシ1人では大したことはできませんが、こういった町が少しでも増えるような活動ができればと思います。
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コメツガ(八ヶ岳) マツ科の常緑針葉樹
東北~四国までの亜高山帯に生育。日本固有種。
日本にツガ属はツガ、コメツガの2種のみで、葉っぱの大きさと毛があるかで判別ができます。
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3月17日② 田中 正則さん 「日本林業の可能性を探る」
林野庁に所属されていた田中さんから、日本の林業の歴史、現状、未来について講演いただきました。
■歴史
・600~850年 平城京、平安京など遷都により
・1570~1670年 全国で城づくりにより
・1930~1965年 戦争と高度経済成長により
この3度の大規模な森林伐採が行われ、その間には植林・育成期間もあった。
・1961年(S36年)日本の木材が最も高価な時代
・1964年(S39年)木材輸入の関税撤廃
これ以降、日本の林業は低迷。
■現在
木材自給率はS30年代の96%超えから、H14年に史上最低18.8%を記録するが、現在は31%にまで回復。
関税撤廃により低迷したが、最も大きな課題は、
「造林コスト」が高い
ことである。
日本では、1立米当り7,000~8,000円程度のコストに対し、
マレーシア1,500円、フィンランド、スウェーデン、カナダ、イギリスは1,000円程度のコスト。
どう考えても異常ですね...
先日、伐採搬出作業を行っている現場を見学させていただいたのですが、
伐採はできても植林・育成が難しいと言っておりました。
理由として考えられることは、
・日本は急峻な地形が多く作業が困難
・シカによる食害のため、幼木はみんな食べられてしまう
・賃金が安く、後継者も少ない
どのようにすれば良いか、なかなか良い案がありませんが、
どこか一部の地域や行政だけ頑張っても、大きな効果を得ることは難しいと思います。
先ほどもお伝えしたように、国全体が自然環境にもっと力を入れて対策していくべきではないでしょうか。
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この記事へのコメント
増田
望月さんは64Kでしたが私が林道よりトレイルに入る渋滞にハマっている時トップで下りてきましてハイタッチさせてもらいました。
望月さんを含めトップレベルの人達は凄いですね。
これでも同じ人間かと思ってしまいますね。
この講演会は私も聞きたかったのですが両日とも仕事で行けなく残念でした。
4/22の登山道整備に出られるようでしたらその時でも話を聞かせてください。
watamu
いつもコメントありがとうございます。望月さん、スゴイ方ですね。体力はもちろんのこと、精神力もすごいのでしょうね。
ワタシも少しでも体力づくりを...と思っているのですが、この弱い精神力ではなかなか続きません(-_-;)
4月22日登山道整備に参加しますので、どうぞよろしくお願いします!