現在では、大井川に沿った大井川鐵道井川線、県道により行き来することができます。
ただ崩落が激しい接岨峡を通過しなければならないので、現在においても工事が頻繁に行われている区間です。
昔にさかのぼると、
1692年に井川地区で森林の伐採が行われ、江戸幕府の御用材として使用されていた記録があります。
伐採された木材は、大井川の水を使って流していました(川狩り)が、
接岨峡では、12kmを20日かかって流送を行っていました。
千頭から島田まで60kmの流送期間が30日であったことからも、接岨峡が難所であることがわかりますね。
よって、大井川沿いよりも簡単な山の稜線沿いのルートを通行したこともあるようです。
そこで、今回は昔の人々に習い、千頭~井川まで山沿いのルートを1泊2日で歩いてきました。
その内容を紹介します!
荷物は以前作成したこちらのブログの内容になりますので、ご参考下さい。
http://muishizen2.seesaa.net/article/426961213.html
登山装備(テント泊縦走編)
5月8日8時15分に千頭駅を出発して、
智者山~天狗石山~七ッ峰の1200~1500mの稜線沿いから、富士見峠に出て井川駅へ進むルートです。
帰りは井川線に乗車し接岨峡ルートで帰ってきました。
歩いた山ルートの標高の断面図を作成しました。
智者山の登りが大変ですが、それ以降はそれほど急なところはなく進めました。
千頭駅から大井川を渡って、千頭温泉旬の横にある登山口から進んでいきます。
35分ほどで、智者の丘公園に着きました。ここは千頭の町並みが見渡すことができるスポットとなっています。クルマでも行けます。
智者の丘公園をあとにして、スギ・ヒノキの植林帯をひたすら進みます。
智者山は、智者山神社からの登山がメインで、下から登る人はほとんどいません。
登山道といっても整備が十分ではないところもあり、迷いやすいです。
智者の丘公園から1時間ほど登ったところで、早速ルートの間違いが発生。
智者山の地形図を見てみますと...
三叉路で左右へのルートがあったが、どちらが順路かわからず左へ進んでしまい、行き止まりとなってしまいました。
その次には、この付近は個人所有で、私道の林道を作って林業を従事されている山でもあり、
登山道から林道に入ってしまうと、自分がどこへ向かっているかわからなくなってしまいます。
こういった林道は地形図に載ってなく、たくさんあります。
例えば、この分岐。もちろん地図にありません。
どちらへ進むかは、地図、地形、方角を確認しますが、どこにいるかよくわからないので、
あとは勘で...進んでいきました。
したがって、少し進んで周囲の雰囲気から「こっちじゃないな...」と戻るシーンも。
林道を進んでいったところ、たまたま見つけた登山道。
たぶんここだな~と思い、登山道に復帰。
地形図上には、登山道が明記されているので、林道に惑わされずに登山道を進めば良いのですが、
看板もなく、人も歩いていないとなると、登山道を見落とす可能性が大です。
また林道の方が広くて歩きやすいので、何となく林道を進んでしまうことも迷いやすい要因ですね。
ようやく智者山の山頂へ続く最後の壁に到着。ここで昼12時。
30度はあろうかという急な登りを登っていきます。
山頂に近くなると、スギ・ヒノキの植林地帯からブナやヒメシャラといった広葉樹林帯に変わってきます。
そのちょうど境がこの写真。森の明るさが全く違いますね。
13時、ようやく智者山山頂に到着しました。
山頂からの景色。
尾根沿いの道は、広葉樹を中心とした樹林帯を進みます。
スギ・ヒノキの植林帯は暗いので怖さすら感じます。整然とした光景も面白いですが、長くは続かず怖さ・不安が勝ってきます。
広葉樹林帯は、この写真のように明るさのほか、多様な木の種類、さまざまな樹木の形、ふかふかの落ち葉、鳥のさえずりの大合唱、林床に生える植物など、観察する場所が多くとても楽しいですね。
智者山から歩くこと50分。天狗石山に到着。
智者山~天狗石山のコースは過去2回歩いていて、下のブログに昨年10月に歩いた内容を
公開していますので、ご参考下さい。
http://kawanehon-chiikiok.seesaa.net/article/443804907.htmll
日々のできごと4(智者山と大札山)
天狗石山から奥大井湖上駅方面に10分ほど下ったところにあるお地蔵さん。
こちらは、昨年12月24日にお地蔵さんの祠設置を行ったところです。
昨年の設置時は、中の祠のみでしたが、先日、上の櫓も設置され、大変立派になりました。
このお地蔵さんですが、実は、205年前(1812年)に設置されたものです。
このルートは江戸時代には梅地地区と静岡市を結ぶ梅地街道といわれ、街道の安全を見守っていたというものです。
この付近は古くから交通路として使用していたところであることがわかりますね。
稜線上に戻り、七ッ峰へ向かっていくと、イワカガミがたくさん咲いている場所にきました。
イワカガミ イワウメ科
九州から北海道の高山帯から亜高山帯に分布。
七ッ峰まであと少しのところまで来たが、時間は17時。
暗くなる前にビバークする場所を探さないと...と思っていたところ、
山や樹木の間に囲まれ、風の影響がほとんど受けない、しかもちょうどテント1張り分のスペースを見つけ、ココにしよう!ということで決めたビバーク地点。
シカの鳴き声くらいしか聞こえない静寂の中、19時前には眠りにつき、
朝は野鳥の鳴き声で4時過ぎに起床。5時20分出発。
天気は薄曇り。曇りのち雨の予報だが、まだ雨は降ってこなさそう。
25分ほどで七ッ峰山頂。
山頂から富士山が見えてきました。七ッ峰まで富士山は全く見えなかったので、今回初対面。
七ッ峰の北側斜面は、思ったよりなだらかで広大な広葉樹林帯が広がっていました。
こういう感じの場所、いいですね~
七ッ峰から1時間ほどくだったところ、ここで大問題が発生!
登山道から林道へでる場所で左へ進むのが正しいところを右へ進んでしまい、
その先の林道(もちろん地図にない)でひたすら迷うことに。
あるルートは、道路が崩落していて通行不能、
別のルートは、だいぶ下ってみるも行き止まり...
でも100m下には道路が見えていて、クルマも通っている。
その道路へ下りれば何とかなりそう。
スギの植林帯を無理やり下れば行けるかもと、少し下ってみるも急な谷が行く手を阻む。
ただ、持参した水が尽きかけていたので、
この植林帯の中で偶然見つけた沢の水を汲むことができたのは非常に大きかったです。
まさに命の水ゲット。
結局、1時間半ほど彷徨ったあと、
「迷ったときは、わかるところまで戻ろう」と戻ってみると...
あっ、ここだ!とすぐにわかりました。
登山道から林道へ出るところでした。
このポイントは、
■明確な看板がない
→ ココに看板がなくて迷ったという先人のブログあり
■ゆるやかな登りの方向へ進むのが正しい
→ 下っている方向が正しいルートと誤解
■人間の歩いた跡が下り方向に向かって多くついていた
→ 登山道から林道へ出る場合、この向きが出やすく誤解
いや~難しいですね...
正しい方向へ進み、大無間山が見える広大な草地へ
ここは「梅地パイロットファーム」と言われる農場です。
ここまで来てようやく思ったのだが、
この付近に詳しい方から「大無間山がでっかく見える広大な草地があるよー」という話を聞いていて、
迷っていたのは、大無間山が見えない反対側の斜面だったので、間違ったルートであることが
想像できたなぁと...
振り返ると、下山してきた七ッ峰
三ッ峰経由で富士見峠へ下山し、県道と、途中ショートカットルートを使用して井川駅へ向かいます。
井川の集落が見えてきました。
井川ダムを抜ければ、もうすぐゴール。
七ッ峰から7時間かけて、井川駅 12時30分到着。
12時33分発の井川線にギリギリ乗車できました。
関の沢橋梁からの眺め。
川底からの高さ70.8mは日本一の高さを誇り、接岨峡の険しさを見ることができます。
尾盛駅。周囲に民家なし、駅へ到達する道路なしという秘境中の秘境駅。
今度、この駅で1日過ごすことを目的で来たいですね(笑)
といった感じで帰りはのんびり井川線に乗って千頭駅へ帰ります。
14時21分千頭駅に到着し、無事に終わりました。
このルートを進んで感じたことは、北アルプスや八ヶ岳とは異なる点が多いということです。
■北アルプスや八ヶ岳など著名な山岳
・登山道が整備され、登山者も多く、地図を見なくても進めるほどである
→ 道迷いの可能性が低い
・要所に水場や山小屋も完備
→ 最低限の水や食料でも行ける
■奥大井・南アルプス南部の山
・整備が最低限、登山者も少ないので、登山道が不明瞭な場所も多い。地図にない林道も多くある。
→ 常に地図や地形、方角を確認しながら進まないと、すぐに迷う(特に下山時)
・水場や山小屋はないと思っておいた方が良い(事前調査必須)
→ 全て持参(今回、水2.5リットル持参したが足りなかった)
といった違いがあり、八ヶ岳と同じ感覚で行くと痛い目に遭いますので、
行ってみようという方は十分ご注意ください。
ワタシは、地図の見方や方向感覚には、それなりの自信がありましたが、
今回、この縦走ルートを歩くことによって、
これだけ迷って、考えて、体を使ってという経験ができ、
江戸時代にココを歩いていた先人から「まだまだ学ぶことがあるんだよ」と
助言をいただいたような気がしました。
南アルプス南部は、さらにもっと過酷な山々が控えています。
これから、多くの山に登れるようがんばっていきたいと思います。
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この記事へのコメント
増田
去年会合までの空き時間で麓から智者山登ってみようと思った時
この道をと思ったのですが
蛭の時期で時間もなかったので林道を走って神社に行き登ってきました。
七つ峰は昔藁科川側の本村から登ったことがありますが
今年の3月に図書館で富士見峠より七つ峰に行きました。
確かに余り指導票は無く分り難かったですね。
特に林道から登山道に入り口は合っているのか良く分からなかったです。
でもあそこは地図とコンパスで方角の確認を取っていれば分りますよ。
読図でやりましたナビゲーションのサイクルを回していれば一時間半も迷うことはなかったと思いますので図書館の本を借りて勉強しましょう。
ところで4/30に寸又から黒法師に日帰りで行ってきました。
去年は黒法師を含めた大間川日帰り周回をやったのですが
余りにきつかったので黒法師日帰りにしました。
当日は風が強く寒かったですが天気も良く山頂西面のガレからの眺望は最高でした。谷底から千㍍以上の高度感は最高です。
駿河と遠州の国境のマークタワー、一度登りましょう。
watamu
地図上の丸で示した範囲、実は登山道がわからず、林道を歩いていたところです。また今度、登山道を確認しながら登ってみたいと思います。
七ッ峰の登山道入口の誤りは、
自分の方向感覚に頼っていたのが敗因でした。今日はちょうど山岳図書館にいますので、読図の本を読んで勉強しようと思います。
黒法師岳、ぜひ行ってみたいですね。よろしくお願いします。
増田
実はお昼過ぎに電話を掛けたんですが誰もでなかったので雨で休みにしたんだと思っていました。帰った直ぐ後だったようですね。
土曜日は翌日に開催された道志村トレイルに参加のため雨の中山梨県道志村に向かっていました。
道志村トレイルは川根本町のトレイルと同じような村を挙げて盛り上げている大会で消防団やら観光協会やら地元の団体がスタッフで沢山います。
この大会は第9回となり距離40㌔級では全国屈指のきついレースで有名です。
レースは周回42㌔(累積登り約3200㍍)とハーフ20.4㌔(累積登り約2000㍍+α)で川根本町と似ていますが過酷さはひとレベル上です。
70%以上はトレイルで大きな登りは3つ(最高地点は標高1681㍍)ですが繋げている稜線には無数と思えるほど凹凸が連なっていてデータ以上に堪えます。
出場したのは無謀にも42㌔、最終第2関門(32㌔)で最後の急登500㍍山登りを前に精も根も尽き果て心も折れまくりでリタイヤしました。
自分はリタイヤしてしまいましたが泥だらけヨレヨレになりながらも先に進んでいく選手を見ていたら心の底から尊敬してしまいました。
10月に川根本町がありますので今度は自分がそうなれるよう頑張ってみますね。
watamu
道志村のトレランは私の友人も出場していましたよ。
その友人、富士山や御嶽の長距離の大会に出ている人ですが、それでも今回9時間20分で、大変なコースなようですね。
私には信じられない世界です...